「見えているのに、つかめない」 - 信頼性の高いピッキングの秘訣
先週の記事では、「真度」を活用して、選んだ風船を割らずに画鋲で触れる様子をご紹介しました。本記事は、ロボット自動化における3Dセンシング性能の新しい評価方法を紹介し、真度とは何かを解説するブログシリーズの第1回です。
目次
- はじめに
- どの3Dカメラが自分のニーズに合っているのか?
- VDI/VDE - 「ドイツからの答え」
- 正確度・精密度・真度と ISO 5725
- 視野(FOV) - サンプリンググリッド
- センサー解像度
- 空間分解能
- 深度分解能はどう考えるべきか?
- 細部を捉える
はじめに
Zivid は、可能な限り最高の3Dカラーカメラを設計・製造し、お届けすることを誇りとしています。当社の製品は、要求の厳しい産業環境においても、常に優れた結果を出せるように作られています。しかし、こうした主張をすること自体は簡単です。インターネットで検索すれば、ほとんどのカメラベンダーが同じようなことを謳っています。では、Zivid は何が違うのでしょうか。
本格的な産業用カメラメーカーとして、当社はもちろん、すべての主張を包括的なマシンビジョンカメラの性能評価によって裏付けており、データシートの一部として全カメラの保証性能範囲を明示しています。Zivid のデータシートをご覧いただければ、当社が一般的なものとは異なる、より徹底したアプローチをとっていることがすぐにお分かりいただけるはずです。
また、当社が「真度(Trueness)」について繰り返し語っていることにお気づきの方もいるでしょう。この業界の文脈では、多くの人にとって新しい用語です。当初は、業界のベテランたちからも「マーケティング用語だ」と一蹴されたほどです。しかし、彼らと膝を突き合わせて、本記事でこれからご説明する内容と同じことを説明したところ、態度は一変し、むしろ積極的にこの用語の普及に協力したいと言ってくれるようになりました。
先日開催したウェビナー「真度 - 信頼性の高いピッキングの秘訣」には300名を超える登録があり、最後には多くの質問が寄せられるなど、大変好評をいただきました。業界が真度に関心を持ち、その成り立ちや全体像について、より詳しく知りたいと考えていることが分かります。
当社が取り組んできたのは、3Dカメラの性能を評価・仕様化するための新しい方法を導入することであり、それこそが本ブログシリーズのテーマです。3Dカメラの正確度の基礎を解説しながら、Zivid が自社の3Dカメラに用いている仕様の背景にある考え方と根拠、そしてそれらをどのように定義したのかをご紹介します。あわせて、この取り組みの過程で得られた気づきも共有し、より明確な理解につなげていただければと思います。
なぜ、ロボットによるピック&プレースの分野では、不正確さを精密度と真度に明確に分けて考えることが理にかなっているのか。それは3Dカメラの性能とどう関係するのか。そして、真度 - より正確には小さな真度誤差 - が、協働ロボットセルにおける正確で信頼性の高いピッキングにとって、いかに根本的に重要なのか。極めて小さな真度誤差を実現している Zivid カメラの性能において、この特性がいかに重要であるかをご理解いただけるはずです。それでは、早速本題に入りましょう。
どの3Dカメラが自分のニーズに合っているのか?
高性能なロボットセルにとって重要なのは正確度です。それも、信頼でき、再現性のある正確度です。しかし、正確度とは何であり、どのように導き出されるのでしょうか。Zivid が自動化分野に参入した当初から、この点は明確ではなく、正確度や3Dカメラの性能について、人によって異なる表現が使われていることが分かりました。

性能はあらゆる方法で表現され、ベンダーごとに共通の用語がなく、測定条件や手法も統一されていませんでした。ビジョンの専門家の間でさえ混乱しており、ビジョンの専門家ではない顧客にとってはなおさら分かりにくい状況でした。これは正しいやり方ではないと、当社は確信しました。
当社は、この業界のために3Dカメラの性能をより適切に記述する方法を見つけたいと考えました。目標は、「3Dの民主化」に貢献し、3Dカメラの適用可能性をより簡単に理解できる仕組みとなる3Dカメラ仕様を作ること。自動化に取り組む顧客にとって、はるかに直感的で使いやすいものを目指したのです。
VDI/VDE - 「ドイツからの答え」
既存の規格を調べたところ、計測業界には VDI/VDE 2634 と ISO 10360 という、明快で優れた定義方法がありました。これらの規格は、三次元測定機(CMM)の開発に由来するものです。定義の方法自体は非常に優れていましたが、当社が求めていたもの、すなわち理解のしやすさと、当社が重視する業界に馴染みのある用語の使用という点が欠けていました。CMM で使われる「プロービング誤差」のような用語はあまりに専門的すぎて、顧客にとって直感的に機能するものではないと当社は判断しました。さらに重要な点として、ロボットアプリケーションにおける3Dカメラの性能を適切に評価・理解するために必要な指標の一部も欠けていました。
とはいえ、国際的に認められた規格に基づいて性能を評価することの価値は、当社も十分に認識しています。したがって、3Dカメラの新しい仕様化の方法を採用する場合でも、重要な側面がすべて網羅されるよう、既存の規格には引き続き準拠します。当社の仕様では、既存規格と同じ内容をカバーしたうえで、当社カメラのターゲット市場とアプリケーションにより適合する新しい指標を追加し、さらに、より直感的な名称と用語を導入しています。
正確度・精密度・真度と ISO 5725
出発点として適した規格が、すでに ISO 5725 という形で存在していました。国際標準化機構(ISO)は、正確度、精密度、真度の定義とそれらの関係を切り分けて整理する必要性を認識していたのです。ISO 5725 では、それぞれ次のように説明されています。
精密度
繰り返し測定した値同士の一致の程度。ランダム誤差を表し、統計的なばらつきの尺度。標準偏差で表されます。
真度
多数の測定値の平均値(算術平均)と、真の(または合意された)基準値との一致の程度。系統誤差を表し、統計的な偏り(バイアス)の尺度です。
正確度
連続的・反復的な測定値と、真の(または合意された)基準値との一致の程度。2種類の観測誤差(ランダム誤差と系統誤差)の両方を含み、全体の誤差を表す統計的な不確かさの尺度です。したがって、当社が目標として掲げる高い正確度には、高い精密度と高い真度の両方が求められます。
なお、「正確度(accuracy)」という用語は、実際には「真度」を指す意味で長らく使われてきた経緯があります。一方で、文脈によっては「精密度」と合わせて、ランダムな影響と系統的な影響の両方を含む全体のずれを表す意味でも使われていました。そのため、従来は「測定の正確度」という言葉がどちらの意味で使われているのかを、読み手に対して注意深く説明する必要がありました。
これを明確にするため、ISO は、正確度は基準値からの全体のずれを表し、常にランダムな影響と系統的な影響の両方を含むべきであると合意しました。では、3つ目の新しい概念を何と呼ぶべきか。一時は「バイアス」という案も検討されましたが、この用語はさまざまな理由で多くの含みを持っていたため、最終的に「真度(trueness)」という用語に落ち着きました。

真度、精密度、正確度とそれらの関係
ただし、ISO 5725 は3Dカメラのため、あるいは3D測定性能を評価するために作られた規格ではありません。そのための ISO は、前のセクションでご紹介したとおり別に存在します。
では、ISO 5725 はロボットビジョンシステムとどう関係するのでしょうか。実は、これはなかなか複雑な話です。だからこそ本シリーズは全4回の構成になっており、まずは前提となる文脈を整理する必要があります。それでは見ていきましょう。
視野(FOV) - サンプリンググリッド
視野(Field-of-view)は、カメラのセンサーがどれだけの範囲を捉えられるかを表します。これは、水平方向と垂直方向に広がる、カメラから見た2次元的な世界の範囲です。その形状は、カメラ光学系の原点から、カメラごとに定められた最大距離まで広がる四角錐台(フラスタム)です。カメラと対象物の距離が離れるほど、フラスタムの底面積と体積は大きくなります。ある距離において、撮像センサーが捉えるシーンの大きさ(すなわち、センサーの全ピクセルでキャプチャされるシーンの大きさ)は、その距離におけるフラスタムの断面積に相当します。
Zivid 3Dカラーカメラの水平方向の視野のイメージ
一般的なピッキングアプリケーション(60 x 40 x 40 cm のビン)における、700 mm および 1100 mm での Zivid Two の視野のカバー範囲
センサー解像度
3Dカメラのセンサー解像度は、センサーのピクセル数によって決まります。ピクセル数は「サンプリング位置」の総数を表します。たとえば 1920 x 1200 ピクセルのグリッドであれば、230万ピクセルのサンプリンググリッドが得られます。通常の2Dカメラは、各ピクセルに対して RGB 値を出力します。3Dカメラが異なるのは、これに加えて X・Y・Z 軸の座標情報を提供する点です。この座標は、3Dカメラ内部の原点から、空間内の各サンプリング点における対象物表面までの距離測定値を表しています。
センサー解像度を高めた場合の効果のイメージ。同じシーンを、Zivid の高解像度3D点群と、より低解像度の Time-of-flight(TOF)カメラで比較
空間分解能
カメラの各ピクセルは、像面上の小さな正方形領域の光を測定します。この領域は、フラスタムが広がるにつれて拡大し、カメラから表面までの距離が離れるほど大きくなります。それに応じて、XY 平面における空間分解能の値も、カメラから撮影領域までの距離が離れるほど大きくなります。
個々のピクセルがカバーするこの正方形領域が、その距離における空間分解能です。たとえば、被写体から1メートルの作動距離で使用した場合、Zivid One+ カメラの空間分解能は 0.375 mm です。この、ある距離における空間分解能の値が、測定可能な最小の特徴サイズを決めることが分かります。カメラを近づければ空間分解能は細かくなり、より小さな特徴が見えるようになります。逆に遠ざけると空間分解能は粗くなり、最も小さな特徴は識別しにくくなります。つまり、ピクセル数、FOV、作動距離が、点群から抽出できる最小の特徴を決定するのです。

距離による空間分解能の違い
深度分解能はどう考えるべきか?
インターネット上では、空間分解能(横方向の XY 分解能)とあわせて、深度分解能(軸方向の Z 分解能)という用語を使って3D性能を表現している例が見られます。空間分解能は、センサーの物理的なピクセルと FOV によって決まるため、比較的理解しやすい概念です。しかし、深度分解能を同じように一貫した形で語ることは、それほど単純ではありません。論理的に同じアプローチを適用するなら、深度分解能は Z 軸方向で分解できる最小距離となるはずであり、それは根底にある測定原理と、センシング技術の基本的な限界に関係することになります。しかし、ここには落とし穴があります。
さまざまなノイズ源が存在するなかで、センシング技術の基本的な限界をどうすれば一貫した形で定義できるのでしょうか(たとえば、一部の論文のようにショットノイズだけを含めるべきなのでしょうか)。結果として、一般的に使われているのは、深度測定の全体的なノイズレベル、いわゆる「Zノイズ」です。しかし、ここに問題があります。ロボット自動化の文脈で測定ノイズを語るとき、重要なのは完全な3D点群だからです。各ピクセルにおける測定は、深度(Z)だけの測定ではなく、3次元(X・Y・Z)の測定です。当然ながら、Zノイズだけを取り上げて論じるのは適切ではありません。
したがって、正しいアプローチは、そして Zivid が採用し本ブログシリーズで解説しているのは、次の考え方です。
センサー解像度は3D測定のサンプリンググリッドを与え、各サンプリング位置において、対象表面上の点は完全な3Dで測定されます。そして、測定のばらつきと、3次元すべて(X・Y・Z)における細部の分解能力は、「精密度」、すなわち連続する測定値間で測定されるユークリッド距離によって表されます。
真度についての第2回 – 細部を捉え、現実に忠実であること
次回はこのテーマをさらに掘り下げ、精密度と真度とは何か、それらによってどのように細部を捉えられるのか、そして私たちが見ているものが現実とどれだけ一致しているのかを解説します。
You May Also Like
These Related Stories

精密度と真度 - 細部を捉え、現実に忠実であること

Zivid、透明イメージング機能を備えた3Dカメラのシリーズ最新作を一挙発表



